2017/07/21

haruka nakamuraさんとの数年

数年に渡り共にしてきたハルカナカムラさんのピアノ・アンサンブルもいよいよ本日の演奏会をもって終焉を迎える。

この編成は、 『twilight』というアルバムで私が作った多重録音を生演奏で再現するところから始まったと思っています。

少し長くなりますが書いてみたいと思います。



『twilight 』

10年位前、インディー・ポップスの録音を数多く行っていました。

現場では、急に「何か入れて下さい」と言われることも多く、その場で急遽ハーモニーを作り、多重録音をするという作業を数多くこなしていました。
そうしているうちに、吹き方やハーモニーを工夫することで、独特の響きが作れることに気づいたのでした。

「いつかこのアイデアを全面的に展開してみたい」と思っていた折、ちょうど中村さんからトラックが届き「好きな曲に好きな音を入れてほしい」という自由なオファーを頂いたので、全面的に投入しました。

そうして出来たのが、アルバム『twilight』の管楽器のハーモニーです。

 


普通、サクソフォンの録音依頼をする人は、まずはソロを念頭に置いていると思いますが、テナーサックス最大7本のハーモニーが送られてきて、中村さんは驚いたことでしょう(笑)。

ここで作った音は、幸いにしてかなりの評判を頂き、自分としても思い出深いアルバムとなりました。
今でも愛聴して下さっている方が多いと聞きます。




『音楽のある風景』

『twilight』では送られてきたトラックに管楽器のハーモニーを入れましたが、
次作『音楽のある風景』では、トラックになる前の段階から関わることになり、
おかげで例えば「SIN」という曲では、管弦のみのパートも作ることができました。

転調を織り込み、シンプルな1フレーズのみの主題を何処まで飽きさせず格好良くできるかに挑戦しました。
これも少なからぬ反響をいただきました。







『光』

その後、ライブを重ねるうちに共演者も増え、編成が大きくなると、
譜面の苦手な中村さんのために、色々な人がアレンジやコード取り、譜面の用意をしてくるようになりました。

最終作『光』ではその大編成が存分に収められています。


色々な人を動かす中村さんのコミュニケーション能力は類稀なるものがあると思います。
専門的な部分は大胆に人に任せられるから、一般リスナーの視点を持ったまま音楽を作れるのかもしれません。

彼の曲がどこか懐かしいメロディーなのは、そのような理由があると思いますが、そこに時には薬、時には毒のような音も交えることで、音が一歩踏み出すと信じています。

アドリブにしろ編曲にしろ、そういった音を交えてゆくのは、楽しいことでした。
ありがとうございました。