2015/06/22

河合和美の像


河合和美さんは、日常使いの器も作られているが、単純な用在性からはみ出したような、どこか不思議で奔放なところを持ったものが多い。

そしてこの像は、そのはみ出した部分ばかりを集めて作られたような作品である。

風化したかのような姿は、遺跡から発掘されたような場面をイメージしたのだという。

このような作品がオブジェのコンテストの類で賞を得ることは無いかもしれない。
けれど、だからこそ付き合って飽きることを知らない。

「風化」と一緒に、賞を獲るような顕示欲も洗い流され、
石化した珊瑚や古物の隣に置くことが可能。

そのような境地に辿り着いて生まれたこの像に反応を示すのは、
やはりごく一部の物作りをする人なのだという。

物作りを通じて、「技巧を誇示しないこと」や「長い鑑賞に堪えるもの」などについて考えた経験がある人が、立ち止まり、はっとする。
しかし、今のところ、それは年に一人か二人なのだという。

長く付き合うことが可能なものは、その自然さゆえに、一見地味で見落としてしまうことが多い。

それが器ではなく、 このような像なら、尚更かもしれない。

日常使いの器ではなく、それでいてギラギラしたものがさっぱりと洗い流されたこの作品は、とても稀有なものだと思う。